スマートシティアプリケーションの効率的実装を支援するデータ連携基盤の拡張(中橋)
背景
Society5.0を実現する社会の都市実装であるスマートシティ構想において,データ連携基盤ソフトウェアで構築される都市OSが重要な要素として位置づけられています.
都市OSは都市内の状況をデータとして集約し,データ利活用のための機能を提供する基盤です.都市OSを各地域に導入し,地域のデータを活用したスマートシティアプリケーションが各ベンダから提供されることが期待されています.そのためには,都市OSを活用したアプリケーション開発が効率的に行える環境が整備されることが課題となっています.
本研究ではスマートシティアプリケーションの構成要素をデータ収集・データ処理・物理世界への還元フローの3つに分類し,各フローにおいて,スマートシティアプリケーション開発の障害となっている問題点に着目しました.
一つ目の問題点として,データ収集フロー・還元フローにおいて,データ収集のためのIoTセンサや,物理的動作を実行するIoTアクチュエータを都市OSに配備するためにIoTデバイスと都市OSの専門知識が要求され,連携の障害となっていることが挙げられます.これを解決するために,都市OSへの配備のための手順を,各IoTデバイスの知識を持つ人が行う作業と,データ連携基盤の知識を持つ人が行う作業を分離させるための仕組みを作ることが課題となります.
二つ目の問題点として,データ処理フローにおいて,位置データの処理を行うための機能が都市OSに充実していないことが挙げられます.これにより,現状では開発者は物の位置データに基づく条件判定処理をアプリごとに独自実装することが求められます.アプリに要求される条件判定処理を都市OS側で提供し,実装から切り出すことで実装コストを低減することが課題となります.
目的とアプローチ
本研究の目的は,これらの課題を解決し,スマートシティアプリケーションの開発を効率化することです.
そのためのアプローチとして,各フローに対してデータ連携基盤ソフトウェアを拡張するサービスモジュールの実装・適用を行いました.
A1: IoTデバイスのデータ連携基盤への連携を容易化するサービスの開発
まず,データ収集フロー・還元フローに関わるIoTデバイスのIoTプラットフォームへの連携を容易化するサービス IoT Mediator を開発し,データ連携基盤ソフトウェアFIWAREに適用しました.
これにより,IoTデバイスとの連携における責任分界点を分離し,IoTデバイスと都市OSの連携・並びにIoTデバイスを活用したサービスの開発の効率化を実現しました.
A2: 位置データを活用したアプリケーション開発を効率化するためのデータ連携基盤拡張
次に,都市OSへの位置データ処理機能の拡充を目的とし,ヒトやモノの位置状況に応じて適切なサービス提供を行うロケーションアウェア(LA)サービスの実装を支援するプラットフォーム LAプラットフォーム を開発しました.
提案プラットフォームは,LAサービスの機能として必要な位置データに基づく条件(Condition)判定処理やデータ処理機能を提供することで,LAサービス開発からこれらの実装を省略することを実現します.
また,提案プラットフォームを用いたサービス開発と従来手法の開発を比較し,提案プラットフォームの機能的評価を行いました.