大規模救急データと年代別人口推計データに基づく長期的救急需要予測手法の提案
日本全国における慢性的少子高齢化
近年,日本全国において慢性的に高齢化率は上昇を続けている.高齢化率とは,総人口に占める65歳以上の者の割合のことを示しており,令和元(2019)年時点で高齢化率は28.4%,その後も上昇を続け2065年には,約2.6人に1人が65歳以上,約3.9人に1人が75歳以上の超高齢社会が到来すると考えられている.
2021年消防白書によると「令和3年に行った将来推計によると,高齢化の進展等により救急需要は今後増大する可能性が高いことが示されており,救急活動時間の延伸を防ぐとともに,これに伴う救命率の低下を防ぐための対策が必要である.(2021年消防白書より)」と記述されている.
取り組む課題
日本では近年急速に高齢化が進んでおり,救急需要は増大,多様化を極めてきている.この現状を受け医療現場では救急業務を取り巻く諸課題への早急な対策案が必要になってきている.しかしながら,現状で具体的な将来の需要変化をとらえることができず,救急需要の増加や救急リソースの逼迫が深刻化していくにもかかわらず規模の大きな救急隊や病床の編成が確固たる根拠なしには実行しにくい状態にある.
そこで本研究では,救急需要の中でも救急車や救急隊の編成に関わる年間救急搬送者数に着目し,これの中長期的予測手法を提案することにより,救急隊の戦略的な配備や医療現場における規模の拡大縮小の指標の提供を行う.
目的とアプローチ
本研究の目的は,増大し多様化しつつある日本の救急需要に備え,救急隊の戦略的な配備や医療現場における規模の拡大縮小の指標の提供をすることである.そのために,救急搬送者数の中長期的予測手法の確立を目指します.
提案手法の概要
この提案手法は現在,過去,未来のいつの時代においても年代毎の人口に対する搬送率は不変であるため,年代別の人口変化率に救急搬送数を掛け合わせれば将来の救急搬送数の予測ができるという考えに基づいている.