描画過程に基づく認知機能検査アプリケーションの集団検査に向けた改良(吉田)
背景
現在,日本は高齢者の増加によって医療需要が増加し,医療従事者の不足が深刻な問題になっています.その解決策として,医療現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進められています.
また認知症患者数が増加しており,認知症の早期発見に向けた集団認知機能検査の定期実施の実現が求められています.
先行研究とその課題
我々の研究グループでは先行研究として,認知症検査の一つである描画検査の DX を目指し,デジタル描画検査の実施・診断・分析を一手に行える Web サービス「EVIDENT」を実装しました.しかし、EVIDENTはセキュリティ・運用の面から集団での描画検査には適していないという課題があります.
目的とアプローチ
本研究では,EVIDENT を集団での描画検査に適したサービスへと改良することを目的として,「EVIDENT-GROUP」を提案・実装しました.
EVIDENT-GROUPでは目的を達成するためのアプローチとして以下の3つの要件を定義しました.
R1: ユーザーのすみわけ
セキュリティ上の観点から,医療従事者は描画データの閲覧や分析を行うアプリ,被験者は描画検査を行うためだけのアプリをそれぞれ使用するといったように,ユーザーの種類や役割に応じたすみわけを行いました.
R2: 医療従事者の属性の追加
複数の検査会場で実験を行う場合を想定し,サービスのエンティティに医療従事者の属性を追加し検査会場ごとにサービスを複製する必要がないようにしました.
R3: ログインシステムの簡略化
集団検査を円滑に実施するために,ログインの手法を簡略化しました.また定期的な検査を想定し,2回目以降の検査において1回目に検査した被験者と同じ被験者の描画データとして簡単に登録できるようにしました.
サービスの内容
EVIDENT-GROUP は被験者用の「EVIDENT-EXAM」,医療従事者用の「EVIDENT-ADMIN」,管理者用の「EVIDENT-CONF」の3つのアプリからなり,これによりユーザーのすみわけを行っています.
実験
実装したサービスを用いて通所介護施設の高齢者を対象に予備実験を行い,提案した EVIDENT-GROUP を用いて実際の現場でも問題なく描画検査が行えることを確認しました.